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海外のウェザーマーケティング成功事例10選|天気で売上を伸ばした企業の施策と成果

暑い日には冷たい飲み物が、雨の日には傘やデリバリーが、花粉の多い日には薬が売れる。天気と消費行動の関係は、多くの人が実感しているものです。

海外では、この関係をデータとして広告や販促に組み込む「ウェザーマーケティング」が早くから取り入れられ、大手ブランドや小売チェーンが成果を公表しています。

本記事では、天気データを活用して成果を上げた海外企業の事例を10件紹介します。それぞれの施策の仕組みと成果に加え、事例から見える成功の共通点と、日本で取り入れるためのポイントもまとめました。自社の商品やサービスに天気をどう活かせるか、ヒントを探している方はぜひ参考にしてください。

ウェザーマーケティングとは

ウェザーマーケティングとは、気温・降水・湿度・花粉などの気象データをもとに、広告の配信や商品の品ぞろえ、販促のタイミングを調整するマーケティング手法です。

天気は、人の行動と気分の両方に影響します。気温が上がれば飲料やアイスクリームの需要が増え、雨が降れば外出が減ってECやデリバリーの利用が増えます。こうした「天気が変わると欲しいものが変わる」瞬間に合わせて情報を届けることで、広告の反応や売上を高めるのがウェザーマーケティングの考え方です。

広告の分野では、天気を配信条件にする手法を「ウェザーターゲティング」とも呼びます。仕組みやメリットは、ウェザーターゲティングとは?メリット・仕組み・活用事例をわかりやすく解説で詳しく解説しています。

海外のウェザーマーケティング成功事例10選

ここからは、海外の10の事例を紹介します。成果の数値は、各社・広告会社が公表している事例資料や広告賞の応募資料などにもとづいています。出典は記事の最後にまとめました。

1. パンテーン(アメリカ):湿度の予報に合わせてヘアケア商品を提案

業種ヘアケア(P&G)× ドラッグストア(Walgreens)
使った天気湿度など、地域ごとの天気予報
媒体The Weather Channelのアプリ・Web、店頭
成果Walgreensでのパンテーンの売上が前年同期比24%増(目標は10%増)、ヘアケア売り場全体も4%増

髪のうねりや広がりなど、いわゆる「髪がまとまらない日」の大きな原因は湿度です。パンテーンはこの点に注目し、天気予報アプリ「The Weather Channel」で、地域の天気に合わせた「ヘアキャスト(髪の予報)」を配信しました。

たとえば高温多湿のシカゴではうねりを抑えるセラムを、乾燥したロサンゼルスでは保湿ラインをすすめ、ドラッグストアのWalgreensで使える2ドル引きクーポンも提供。店頭にも天気別の売り場をつくり、「天気予報を見る→自分に合う商品を知る→店で買う」という流れを設計しました。

2013年7〜8月、Walgreensでのパンテーンの売上は目標の10%を大きく上回る前年同期比24%増となり、ヘアケア売り場全体の売上も4%伸びたと報告されています。施策の詳細は、パンテーン「ヘアキャスト」の事例で解説しています。

ポイント:天気予報を見るタイミングは、その日の身支度や買い物を考えるタイミングでもあります。予報と同じ画面で「今日のあなたに合う商品」を示し、店舗での購入までつなげた点が、メーカーと小売の両方にとって成果につながりました。

2. ウォルマート(アメリカ):天気と販売データで品ぞろえと広告を変える

業種総合小売(スーパー・ディスカウントストア)
使った天気ハリケーン、気温、湿度、花粉
媒体店舗の品ぞろえ・売り場、店舗のSNS・アプリ・店内ディスプレイ
成果ハリケーン前、イチゴ味のポップタルトの売上が通常の約7倍になることを発見し、事前の品ぞろえに活用

ウォルマートの事例は、天気と販売データを組み合わせた「ウェザーマーチャンダイジング」の代表例として知られています。

2004年、大型ハリケーン「フランシス」の接近に備え、同社は過去のハリケーン時の販売データを分析しました。その結果、懐中電灯などの防災用品に加えて、イチゴ味のポップタルト(トースターで温めるお菓子)の売上が通常の約7倍に増えること、ハリケーン前に最も売れる商品はビールであることが分かり、商品を前もって店舗に送りました。

その後、同社は気象情報会社The Weather Companyの「WeatherFX」と連携し、天気に合わせた広告の出し分けにも取り組んでいます。気温と湿度が上がる地域ではスポーツドリンクや水、花粉が増える時期にはアレルギーの市販薬、といった具合に、地域の天気に合わせて店舗のSNSやアプリ、店内ディスプレイの広告を切り替えました。報道によると、気温が約32℃(90°F)を超えるとスポーツドリンク、約4℃(40°F)を下回るとスープ、花粉が多い日はアレルギー薬の広告を出すといったプログラムもテストされています。

ポイント:「天気が変わると何が売れるか」を自社の販売データから見つけることが出発点です。広告だけでなく、在庫・物流・売り場までを天気に合わせて動かすことで、機会損失を防いでいます。取り組みの詳細はウォルマートの天気と品ぞろえの事例で、日本の小売での考え方はウェザーマーチャンダイジングとは?天候で変わる購買行動と広告戦略を解説で紹介しています。

3. リプトン アイスティー(ベトナム):リアルタイムの天気でYouTube広告を配信

業種飲料
使った天気リアルタイムの天気データ(OpenWeatherMapのAPI)
媒体YouTube(6秒・15秒の動画広告)
成果クリック率153%増、販売数量18%増

ベトナムのリプトン アイスティーは、18〜44歳の女性をターゲットに、YouTubeで6秒と15秒の動画広告を展開しました。天気データのAPIと連携し、リアルタイムの天気をもとに広告の配信を制御したのが特徴です。

その結果、約380万人にリーチし、動画の完全視聴は1,300万回、クリック率は153%増、販売数量は18%増という成果が報告されています。

ポイント:冷たい飲み物のように「暑さ」と需要が直結する商品は、天気と広告の相性が特に良い分野です。短尺の動画で「今飲みたい」と思わせる瞬間に届けることで、認知だけでなく販売にもつなげています。

4. ウェンディーズ(ニュージーランド):天気でTikTok広告を自動でオン・オフ

業種ファストフード
使った天気23店舗それぞれの半径10km圏の天気
媒体TikTok
成果夏の限定ドリンクの売上が前年比85%増、広告費1NZドルあたり2.2NZドルのリターン

ニュージーランドのウェンディーズは、夏の限定ドリンク「Summer Sparklers」の売上を伸ばすため、天気をきっかけに広告を出す仕組みをつくりました。

分析の結果、天気が購入の大きな要因になっていることが分かったため、国内23店舗の半径10km圏の天気データを取得。天気のAPIとTikTokの広告管理APIをつなぎ、条件に合ったときだけ広告グループが自動でオンになるようにしました。

その結果、Summer Sparklersの売上は前年比85%増。広告費1NZドルあたり2.2NZドルのリターンも報告されています。

ポイント:店舗ごとに「その店の周りの天気」を見て配信を切り替えている点が特徴です。来店型のビジネスでは、広い地域の平均ではなく、店舗の近くの天気を条件にすることが成果を左右します。詳しくはウェンディーズ(ニュージーランド)の事例で解説しています。

5. Elkjøp(北欧):天気に左右される家電をディスプレイ広告で販売

業種家電量販店
使った天気地域ごとのリアルタイムの天気
媒体ディスプレイ広告(Google Display & Video 360)
成果通常のキャンペーンと比べてコンバージョンが178%増、追加の販売2,788件

北欧の大手家電量販店Elkjøpは、電気グリル、除湿機、空気清浄機といった、天気によって需要が変わる商品のネット販売に天気データを活用しました。

地域ごとのリアルタイムの天気に合わせてディスプレイ広告を配信した結果、通常のキャンペーンと比べてコンバージョンが178%増え、2,788件の追加の販売につながったと報告されています。同社はその後、天気に合わせた配信を常設の施策として取り入れています。

ポイント:季節家電は「暑くなってから」「じめじめしてから」探され始めます。天気が変わったその地域に絞って広告を出すことで、需要が生まれた瞬間を逃さずにECの売上につなげています。

6. ジョンソン・エンド・ジョンソン(南アフリカ):雨・寒さ・風で風邪薬の広告を配信

業種医薬品(風邪薬ブランドのBenylin、Sinutab)
使った天気雨、寒さ、風
媒体SNS広告、ディスプレイ広告
成果SNS広告のクリック率が476%高く、前年より55%少ない予算で過去最高の売上成長、市場シェア2ポイント向上

南アフリカのジョンソン・エンド・ジョンソンは、デジタル広告の予算が大きく削られるなかで、風邪薬ブランドの売上を伸ばす必要がありました。

そこで、雨・寒さ・風といった、体調を崩しやすい天気のときに合わせて広告を配信。SNS広告のクリック率は476%高くなり、前年より55%少ない予算で過去最高の売上成長と、市場シェア2ポイントの向上を達成したと報告されています。

ポイント:天気は「広告を出すとき」を決めるだけでなく、「出さないとき」を決める条件にもなります。必要な人が増えるタイミングに予算を集中させることで、少ない予算でも成果を上げられることを示した事例です。

7. Algida(トルコ):1,000種類以上のクリエイティブを天気で出し分け

業種アイスクリーム
使った天気都市ごとの気温帯、風、雨
媒体Meta広告(即配アプリGetirでの購入につなげる)
成果通常の広告と比べてコンバージョン率121%増、売上2.5%増、広告費用対効果1.1%増

アイスクリームブランドのAlgidaは、即配アプリのGetirと組み、天気に合わせて広告の中身そのものを変える取り組みを行いました。

気温の帯や風・雨の有無に合わせた1,000種類以上のクリエイティブを用意し、都市ごとの今の天気に合ったものを自動で表示。たとえば雨の日には「家でアイスを楽しむ」というメッセージで、箱入りの商品を見せました。

この施策は、同じ予算・同じターゲットで「天気に合わせた広告」と「通常の広告」を比べる形で検証されています。天気に合わせた広告はコンバージョン率が121%高く、売上は2.5%、広告費用対効果は1.1%高いという結果でした。

ポイント:「暑い日だけ配信する」のではなく、雨の日や寒い日にもその天気に合った提案を用意している点が参考になります。また、通常の広告と比べる検証を最初から組み込んでいるため、天気を使う効果がはっきり分かります。詳しくはAlgida(トルコ)の事例で解説しています。

8. Waitrose(イギリス):晴れ用と雨用の動画広告を切り替え

業種スーパーマーケット
使った天気地域ごとの気温(24℃超で晴れ用の広告)
媒体YouTube、SNS広告
成果制作期間を変えずに、天気に合わせた広告を展開(数値は非公表)

イギリスのスーパーマーケットWaitroseは、天気が変わりやすいイギリスの夏に合わせて、2024年に天気で切り替わる動画広告を展開しました。

夏の主要な商品ごとに「晴れ用」と「雨用」の2種類の動画を制作し、その日の天気データに合わせて配信を切り替える仕組みです。晴れ用の動画は、気温が24℃を超えた地域でYouTubeとSNS広告に配信されました。

成果の数値は公表されていませんが、同社は「制作にかかる期間は変わらず、天気に合わせて広告を変えられるようになったことで、ありきたりではない広告になった」と説明しています。

ポイント:クリエイティブを何百種類もつくらなくても、「晴れ用・雨用」の2パターンから始められることを示した事例です。小さく始めて効果を見ながら広げる進め方は、多くの企業にとって取り入れやすいはずです。

9. スミノフ サイダー(イギリス):19℃以上で屋外広告を表示

業種アルコール飲料(Diageo)
使った天気気温(19℃以上)
媒体デジタルサイネージ(ロンドンの屋外ビジョン、スーパーの店内画面など)
成果数値は非公表

酒類大手Diageoのスミノフ サイダーは、2017年夏、気温が19℃以上になると表示されるデジタルサイネージ広告を展開しました。ロンドン市内の屋外ビジョンのネットワークや、スーパーの店内の画面などで配信されています。

イギリスの屋外広告会社JCDecauxでは、ほかにもRay-Ban(晴れの日と天気が悪い日でクリエイティブを切り替え)や、カー用品のKwik Fit(天気に合わせてタイヤのおすすめを変える)など、天気で内容が変わる屋外広告が多く展開されています。

ポイント:デジタルサイネージは、天気の影響を最も受けやすい「外にいる人」に向けた媒体です。ネット広告と同じように、その場の気温や天気で表示を変えられます。

10. Duane Reade × Poncho(アメリカ):花粉予報とクーポンを一緒に届ける

業種ドラッグストア
使った天気花粉の予報
媒体天気のお知らせサービス(メッセージ配信)
成果試験的な取り組みのため、数値は非公表

ニューヨークのドラッグストアチェーンDuane Readeは、天気をメッセージで知らせるサービス「Poncho」と組み、ニューヨークとボストンで試験的な取り組みを行いました。

花粉症があると登録したユーザーに、3日間の花粉予報と、アレルギー薬クラリチン(30錠入り)の4ドル引きクーポンを一緒に届ける仕組みです。当時、Ponchoの登録者約15,000人のうち、約4,000人がアレルギーがあると回答していました。

ポイント:「花粉が多い」という情報そのものが、受け取る人にとって役に立つ内容です。広告を押し付けるのではなく、役立つ情報と一緒に商品を案内することで、自然に購入につなげる設計になっています。

海外事例から見える成功の共通点

10の事例を見ると、業種や国は違っても、成果を上げている取り組みにはいくつかの共通点があります。

天気と商品の関係がはっきりしている

湿度とヘアケア、暑さと冷たい飲み物、寒さと風邪薬など、どの事例も「この天気のときにこの商品が必要になる」という関係が明確です。ウォルマートのように、まず自社の販売データから天気と売上の関係を見つけることが、施策の出発点になります。

配信の条件を数値で決めている

「24℃を超えたら」「19℃以上なら」「店舗の半径10km圏の天気」のように、配信の条件を具体的な数値と範囲で決めています。条件が明確なので、自動で切り替える仕組みにでき、運用の手間も増えません。

広告の中身も天気に合わせている

配信するかどうかだけでなく、Algidaの雨の日のメッセージや、Waitroseの晴れ用・雨用の動画のように、天気に合わせて広告の内容まで変えている事例ほど、受け手にとって「今の自分に向けた広告」になります。

通常の広告と比べて効果を確かめている

Algidaは同じ予算・同じターゲットで通常の広告と比較し、Elkjøpも通常のキャンペーンとの差を測っています。天気を使った効果を数字で確かめているからこそ、施策を続ける判断や、ほかの商品への展開がしやすくなります。

日本でウェザーマーケティングを取り入れるには

日本は四季があり、梅雨や台風、花粉、急な気温の変化など、天気が暮らしに与える影響が大きい国です。海外の事例は、日本の業種にも置き換えて考えられます。

海外の事例日本で考えられる活用例
パンテーン(湿度×ヘアケア)梅雨の時期に、湿度の高い地域へヘアケア・スキンケア商品の広告を配信
ウォルマート(天気×品ぞろえ)台風や大雪の予報に合わせて、スーパーやホームセンターが備蓄品の広告と品ぞろえを強化
リプトン・ウェンディーズ(暑さ×飲料・飲食)猛暑日に、飲食店やカフェが冷たいメニューの広告を店舗周辺に配信
Elkjøp(天気×季節家電)気温や湿度の上昇に合わせて、エアコン・除湿機のEC広告を強化
J&J・Duane Reade(寒さ・花粉×医薬品)冷え込む日や花粉の多い日に、ドラッグストアや医療機関が案内を配信

日本での事例は、雨の日の売上対策10選やEC事業者必見!気象と購買行動の関係と気象連動型広告の事例を紹介でも紹介しています。

海外の事例の多くは、天気のAPIと広告の管理APIを自社でつなぐなど、システムの開発をともなっています。日本で同じことを始めるなら、天気に合わせた配信を自動化できるサービスを使うのが近道です。

天気連動型の広告配信システム「ウェザアド」は、日本全国を1km²ごと・約37万エリアに区切り、1時間ごとに更新される気象データを使って、Google・YouTube・Meta(Facebook・Instagram)・Yahoo!などの広告配信を自動で切り替えます。気温・降水量・湿度・風速・花粉など、さまざまな天気を単独または組み合わせて条件にでき、広告のクリエイティブや予算、配信のオン・オフもすべて自動で切り替わります。

海外の事例のような「店舗の近くの天気」「〇℃を超えたら」といった配信も、システムを開発せずに始められます。

まとめ

海外では、ヘアケア、小売、飲料、ファストフード、家電、医薬品、アイスクリーム、スーパー、アルコール飲料、ドラッグストアと、さまざまな業種でウェザーマーケティングが成果を上げています。

成功している事例に共通するのは、天気と商品の関係を見つけ、配信の条件を数値で決め、天気に合わせた広告の中身を用意し、効果を確かめていることです。特別な大企業だけの手法ではなく、「晴れ用と雨用の2パターンから始める」といった小さな一歩からでも取り入れられます。

自社の商品が天気とどう関係しているか、まずは身近な天気から考えてみてはいかがでしょうか。

参考資料

本記事の成果の数値は、以下の資料にもとづきます。多くは各社・広告会社が公表した事例資料や広告賞の応募資料で、第三者による検証を経たものではありません。

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