
暑い日には、冷たい飲み物が欲しくなる。誰もが知っている当たり前のことですが、それを広告の配信にどう活かすかで、成果は大きく変わります。
ニュージーランドのハンバーガーチェーン「ウェンディーズ」は、夏限定ドリンクの売上を伸ばすため、天気に合わせてTikTokとInstagramの広告を自動でオン・オフする仕組みをつくりました。競合の10分の1ほどの広告予算しかないなかで、ドリンクの売上は前年比85%増。広告費1ドルあたり2.18ドルのリターンを生み、2022年には広告賞も受賞しています。
本記事では、このウェンディーズ・ニュージーランドの事例について、背景、仕組み、成果、成功のポイントを詳しく解説します。日本の飲食店で応用する方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ウェンディーズ・ニュージーランドの事例の概要
| ブランド | ウェンディーズ(ニュージーランド) |
|---|---|
| 商品 | 夏限定ドリンク「Summer Sparklers(サマースパークラー)」 |
| 時期 | 2021年12月〜2022年1月(ニュージーランドの夏) |
| 広告会社 | Together(ニュージーランドの独立系メディアエージェンシー) |
| 使った天気 | 気温、風速、雲の量など(Open Weather Mapのデータ) |
| 媒体 | TikTok(インフィード広告)、Instagram |
| 主な成果 | ドリンクの売上が前年比85%増、目標を47%上回る、広告費1NZドルあたり2.18NZドルのリターン |
この施策は、The Drum Awards for Digital Advertising APAC 2022で、小売・EC・消費財部門の「最も効果的なコンテクスチュアル広告キャンペーン」に選ばれています。
背景:大手が強い市場で、少ない予算で戦う必要があった
2021年の夏、ウェンディーズ・ニュージーランドは、夏限定ドリンク「Summer Sparklers」を若い世代(Z世代)に売り込む、同社として初めてのドリンク単独のキャンペーンを計画しました。
しかし、ニュージーランドの清涼飲料の市場は競争が激しく、コカ・コーラのような飲料大手と、ウェンディーズのようなファストフード店が同じ客を取り合っています。ファストフードの競合も強く、マクドナルドは「フローズンコーラ」の宣伝に、ウェンディーズの10倍近い広告費をかけていました。
ウェンディーズが広告会社のTogetherに出した課題は、キャンペーン期間中のSummer Sparklersの販売数を、週2,700杯から3,400杯に増やすことでした。これは同社がこれまで一度も達成したことのない高い目標で、しかも使える予算は競合の何分の1にすぎません。同じやり方で正面から戦っても、勝ち目はありませんでした。
着眼点:売上を動かしていたのは「天気」だった
そこでチームは、ウェンディーズの販売データとモバイルのデータを分析しました。その結果、購入の大きなきっかけが天気であることが分かります。暑い日に冷たい飲み物が欲しくなるのは当然ですが、データはそれだけでなく、風の強さ、雲の量、湿度、紫外線の強さといった天気の要素も、ウェンディーズの売上の動きと関係していることを示していました。
競合が広告費の量で勝負するなら、ウェンディーズは「ドリンクが最も欲しくなる天気の瞬間」と「競合が広告を出していない場所」に絞って広告を出す。これが施策の方針になりました。
媒体には、Z世代に届きやすいTikTokを選びました。ニュージーランドではZ世代のユーザーが40万人を超え、食べ物や飲み物の流行が生まれやすい場所でもあったためです。あわせてInstagramでも配信しています。
施策の仕組み:天気で広告を自動でオン・オフする
TikTokは、細かいターゲティングが難しい媒体として知られていました。そこでTogetherは、天気と広告配信をつなぐ仕組みを独自に開発しました。
1. 店舗の周りの天気を集める
天気のデータは、気象データを提供するサービス「Open Weather Map」から取得しました。リアルタイムの天気データを自社のデータベースに取り込むAPIをつくり、ニュージーランドにある23店舗それぞれの半径10km圏の天気を分析。売上が伸びる天気の条件を、店舗の周りの天気と照らし合わせました。対象の地域は、オークランド、ベイ・オブ・プレンティ、ワイカトです。
2. 天気に合わせた広告を用意する
広告は、地域の天気に合わせたメッセージで複数のパターンを用意し、それぞれ別の広告グループに入れました。たとえば晴れて暑くなると、「この夏はクールダウン」というメッセージの広告が流れます。
3. 1時間ごとに天気をチェックし、広告を切り替える
広告配信のパートナー企業がつくったプログラムが、1時間ごとに天気をチェックします。条件に合うと、TikTokの広告管理API(Campaign Management API)を通じて広告グループを自動でオンにし、条件から外れるとオフにして、別の広告グループに切り替えます。こうして、「ドリンクが欲しくなる天気」の時間と場所だけで広告が流れる仕組みができました。
4. 通常の広告と比べて効果を確かめる
ウェンディーズは、天気に合わせた広告と並行して、比較用の通常の広告も配信しました。テスト期間中には、期待どおりに効果が出なかった条件を調整しています。効果を数字で確かめながら、条件を改善していったのです。
成果:ドリンクの売上が前年比85%増
| 売上 | Summer Sparklersの売上が前年比85%増 |
|---|---|
| 目標 | キャンペーンの目標を47%上回る |
| 広告の費用対効果 | 広告費1NZドルあたり2.18NZドルのリターン |
| 通常の広告との比較 | 動画を最後まで見た割合が83%高く、クリック率が9%高い |
| その他 | キャンペーン終了後もリピート購入が続き、ほかのメニューの売上にも波及 |
天気に合わせた広告は、通常の広告と比べて、動画を最後まで見た割合が83%、クリック率が9%高くなりました。同じ商品の広告でも、「今まさに飲みたい」と感じているタイミングで届けることで、反応が大きく変わることが分かります。
ウェンディーズ・ニュージーランドのCEOは、天気がちょうどよいときだけ広告を流したことで限られた予算が最大限に活き、ドリンクだけでなくメニュー全体の売上が伸びたとコメントしています。
なお、目標の内容は資料によって説明が異なり、The Drumの記事では「週2,700杯から3,400杯」、TikTokの事例ページでは「前年比で売上を2倍にする」とされています。どちらの資料でも、目標を47%上回ったと報告されています。
ウェンディーズの事例から学べる成功のポイント
自社のデータから「売れる天気」を見つけた
出発点は、自社の販売データの分析です。「暑いと売れる」という思い込みだけで条件を決めず、風・雲・湿度・紫外線まで含めて、実際に売上と関係する天気の条件を見つけました。根拠のある条件だからこそ、配信を絞っても成果が出ています。
予算の少なさを「タイミング」で補った
競合と同じように広告を出し続けていては、予算の差で負けてしまいます。ウェンディーズは、ドリンクが最も欲しくなる天気の瞬間に予算を集中させることで、少ない予算でも高い効果を出しました。天気は、広告を「出すとき」だけでなく「出さないとき」を決める条件にもなります。
店舗の周りの天気で判断した
来店して買ってもらう商品だからこそ、地域全体の天気ではなく、23店舗それぞれの半径10km圏の天気を見ています。実際にお店に来られる範囲の天気に合わせることで、広告と来店がつながりやすくなります。
天気ごとにメッセージを変えた
広告を出すかどうかだけでなく、天気に合わせて複数のメッセージを用意し、条件ごとに切り替えています。「今日のこの天気」に合った言葉で語りかけることが、高い視聴率とクリック率につながりました。
比較テストで効果を確かめ、改善した
通常の広告と比べる仕組みを最初から組み込み、テスト期間中に条件を調整しました。効果が数字で分かるため、施策を続ける判断もしやすくなります。
日本の飲食店で応用するなら
日本でも、夏の暑さや梅雨、冬の冷え込みなど、天気によって飲食の需要は大きく変わります。ウェンディーズの考え方は、ファストフードやカフェ、コンビニ、テイクアウト・デリバリーなど、さまざまな業態に応用できます。
| 天気の条件の例 | 広告で案内する商品・サービスの例 |
| 最高気温が高い・日差しが強い | 冷たいドリンク、かき氷、アイス、冷たい麺 |
| 湿度が高く蒸し暑い | さっぱりしたメニュー、炭酸飲料 |
| 前日より気温が大きく下がった | 温かいドリンク、スープ、鍋メニュー |
| 雨・強風 | テイクアウト、デリバリー、雨の日限定クーポン |
ウェンディーズは天気と広告をつなぐ仕組みを独自に開発しましたが、日本では天気に合わせた広告配信を自動化できるサービスを使うことで、開発をせずに同じ考え方を取り入れられます。
天気連動型の広告配信システム「ウェザアド」は、日本全国を1km²ごと・約37万エリアに区切り、1時間ごとに更新される気象データを使って、Google・YouTube・Meta(Facebook・Instagram)・Yahoo!などの広告配信を自動で切り替えます。気温・降水量・湿度・風速・前日との気温差などを条件に、店舗の周辺だけで広告を出したり、天気ごとにクリエイティブを切り替えたりできます。ウェンディーズがTikTokとあわせて配信したInstagramでも、同じように天気に合わせた配信が可能です。
飲食店の広告の考え方は飲食店の広告戦略を解説!費用対効果を高めるポイントも紹介で、夏の広告の考え方は【夏の広告戦略】消費行動から考える気象連動型広告の活用法を紹介で詳しく紹介しています。
まとめ
ウェンディーズ・ニュージーランドは、自社のデータから「ドリンクが売れる天気」を見つけ、店舗の周りの天気が条件に合うときだけTikTokとInstagramの広告を流す仕組みをつくりました。競合より大幅に少ない予算でも、夏限定ドリンクの売上を前年比85%伸ばし、広告費1ドルあたり2.18ドルのリターンを生んでいます。
予算が限られているからこそ、「いつ、どこで広告を出すか」を天気で絞り込む。この考え方は、大手と競い合う中小の飲食チェーンや個人店にこそ役立つはずです。海外のほかの事例は、海外のウェザーマーケティング成功事例10選で紹介しています。
参考資料
本記事の数値は、以下の資料にもとづきます。いずれもブランドや広告会社、媒体社が公表した事例紹介で、第三者による検証を経たものではありません。
